処女だけの特権―南アフリカの処女奨学金

処女だけの特権―南アフリカの処女奨学金

どもです。今日は最近気になっていた「処女奨学金」について調べてみました。最初びっくりして目を疑ったわよ。処女奨学金って名前、結構衝撃的じゃないですか?処女奨学金について知ったきっかけはAFP通信のこの記事。

純潔守り人生変える ─ 南ア「処女奨学生」たちの思い

調べてみると他にも記事が出てきたので、まとめてみたいと思います。

 

処女奨学金とは?

処女奨学金は南アフリカのダーバンの北200㎞にあるウトゥケラ(Uthukela)という地区で行われている奨学金制度です。その名のとおり、奨学金を受け取ることができるのは処女の女性のみという変わった奨学金制度。処女であれば、成績も関係なく受け取れるとのこと。奨学金の額には幅がありますが、年間数千ドル(数十万円)の場合もあるようです。

目的はHIV/AIDsの拡大防止。ファクトチェック団体の「アフリカ・チェック」の統計によると、南アフリカでは女性の約25%が19歳までに妊娠を経験しているとされます。そしてこの奨学金制度が行われているウトゥケラ地区では、15~49歳の女性の最大で半数がHIVに感染しているとされているのです。

 

どのようにして確認するのか

そもそも処女かそうでないかはどのように確認するのでしょうか。上記の記事によると「ただし、年配の女性によす処女検査を受ける必要がある」とあります。

この奨学金のためにわざわざチェックする機関を設けたのか?と思って調べてみたところ、この地域ではもともと処女検査があったようですね。

処女検査には、いまだに文化的な慣習という側面もある。ズールー族の王の前で未婚の女性が踊りを披露する伝統儀式「リード・ダンス」でも、参加者は検査を受ける。

女性の敵か味方か「処女奨学金」の波紋 より引用

女性の敵か味方か「処女奨学金」の波紋 ニューズウィークジャパン

このニューズウィークの記事によると、奨学金を受給する学生は休暇で帰省した際にこの検査を受けるようで、処女でなくなった場合には奨学金は打ち切りとなります。

 

女性の権利擁護活動家は反対

この斬新な制度にはやはり反対の声もあるようです。

南アフリカ与党のアフリカ民族会議(ANC)女性連盟のバサビレ・ドラミニ社会開発相は「女性を抑圧する家父長的な諸習慣に根付く明らかな有害行為だ」とし、男女平等委員会のムファンゼル・ショジ氏は「処女という『条件』をつけているために『極めて差別的』で、憲法に違反するものだ」と非難。同氏は更に「女性らに対する検査がHIV予防に繋がる根拠はない」と指摘しています。

確かに処女に意味を持たせるのは男性社会ならではの特徴なので、男性優位社会を助長する制度になってしまう、との声もあります。

人権団体ローヤーズ・フォー・ヒューマン・ライツは、処女奨学金は女子に男子と異なる性的基準を課し、男女の不平等を定着させると指摘しているようです。

 

アイディアの出所は処女の女性たち本人

興味深いのは、こうしてあらゆる権利擁護活動家が強く反対する中で、処女女性たち自身がこの制度を支持しているということです。

妊娠した女性は政府から育児支援などの「褒美」をもらっているのに、自分たちは無視されているということに不満を抱いていたといいます。

この制度で奨学金を受けるトゥベリレ・ドゥロドゥロ(Thubelihle Dlodlo)さん(18)は「処女検査は私のプライバシーを侵害しない。私はありのままの自分を愛しているし、検査は私にさらなる尊厳を与えてくれる」とし、「この奨学金はとても重要。これで私の将来が変わるのですから。世界にだって勝てる」「女性たちのロールモデルになりたい」と語ります。

この制度を導入した女性区長のドゥドゥ・マジブコ(Dudu Mazibuko)区長は、「任意で行われているので、プライバシーの侵害はない。痛みもないし、屈辱を感じることも全くない。」とし、性差別だ、という意見に対しても童貞男性向けの制度も導入する予定だと話します。

様々な批判にも、「批判する人たちはだれも解決策を示そうとしない」と反論しています。彼女自身が高校生の時に妊娠した経験を持ち、少女たちには同じ苦労をさせたくないとの思いが強いようです。

2月の頭には賛成派の地元住民が役所まで行進しているようなので、周囲の非難とは対象的に、当事者は同制度を歓迎しています。

 

同制度への所感

僕が調べていて思った点がいくつかあります。

  1. 本人の意思とは違う形で処女でなくなった場合(つまり強姦など)も、処女奨学金の対象者ではなくなってしまうのか。
  2. 処女奨学金を受けていることは他の人からは分からないのか。
  3. 同制度は本当にHIV/AIDsの感染拡大防止となるのか。

 

まず、強姦などで処女でなくなった場合にも奨学金対象者から外れるのか、に関して。なぜこれを気にするかというと、このような形で処女に絶対性を与えることで、処女でなくなってしまったと、女性たちが一層自尊心を貶めてしまわないか、と思ったからです。

先述の人権団体ローヤーズ・フォー・ヒューマン・ライツの男女平等プログラムを担当する弁護士のサンジャ・ボーンマンは「善意だとしても、完全に不適切で差別的なやり方だ。特にこの国は、性暴力の発生率が高く、自ら望んだセックスばかりではない」と言っています。

先にも述べましたが、処女に意味を持たせることで男性優位社会を助長してしまう可能性もあるので、処女を優遇するこの制度自体が女性の地位を落とすとすれば、本末転倒になってしまいます。

 

そして奨学金を受け取っていることが周囲の人間に分かるのか否か。周囲に処女だと分かることによって、新たな犯罪に巻き込まれるなどの不利益を被る可能性もあるでしょう。

 

また、この制度は若い女性をHIV/AIDsに感染することから守ることを目的としています。

HIV/AIDsの予防啓発として、ABC戦略というものがあります。ABCは禁欲=Abstinence、誠実=Be faithful、コンドーム使用=Condomの頭文字です。要は禁欲的で、相手に対して誠実な態度をとり、コンドームを使用することで感染を防ぐようにしよう、ということ。一部の宗教や性に関する保守的な道徳観をもって予防介入を行おうとしたんですね。

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確かにセックスをする両者が、互いに相手としか性行為をすることがなくて、どちらも陰性ならエイズになることはないですよね。

でもそれは現実的ではない。B,Cなんかは取り組めてもAの禁欲や節欲はどうでしょう。真実であっても、それを実行できなければ意味はありません。

事実、ABC戦略は継続が困難でした。現実的なリスクの回避方法である性交時のコンドーム使用の習慣を与える機会を失くしてしまいます。さらにアイデンティティの発展途上にあり、多くが親の庇護下にある青少年はこの価値観の押しつけに敏感に反応します。

この奨学金は処女であることを奨励することでエイズを防ごうとしている。確かに性行為をしなければ、ほかの感染経路(母子感染と注射器を用いた薬物乱用)の可能性がない限りエイズにはならないでしょう。でもそれは現実的なのでしょうか。

この制度は、逆に言えば非処女であることで奨学金を受け取る機会を失っている、とも取れます。こうなると若い女性の非処女へのスティグマが強化されてしまいます。性行為事態を悪とするのではなくて、正しい性行為について教育する必要があるのではないでしょうか。

ただやはり現場は南アフリカで、まだまだ性行為に関して女性の決定権がないことを考えると、そもそも性行為をしないのが良いような気もしてしまいます…。

 

あと、処女は確かに調べればわかる気もしますが童貞男子はどうやって確認するんだろう。男子向け制度を作ったところで受給希望者が出るのだろうか、とも思います。

 

と、批判的な意見を述べておいてなんですが、やってみる価値はある制度なのかなと思います。新しいことを始める前には心配な点ばかりが思いつくものですし、実際どのような影響が出るか見通しは立たないのですが、当の処女の女性たちは賛成しているわけですからね。

 

みなさんはこの制度について、どのように思われますか?

 

 

参考記事一覧(最終閲覧日はいずれも2016年4月1日)

「処女が条件」の奨学金に賛否両論 南アフリカ CNN.co.jp

女性の敵か味方か「処女奨学金」の波紋 Newsweek日本版

純潔守り人生変える ─ 南ア「処女奨学生」たちの思い AFPBB.News

 

参考文献

エイズ対策入門 2010年4月改定版 (独立行政法人 国際協力機構 青年海外協力隊事務局)