どもです。今日もバンコクで研修でした。住居や出張のことなどの話を聞き、昼過ぎからNGO見学に行きました。タイ最大規模のスラムであるクロントイ・スラムの見学です。
その見学先がなんと、僕が3年半前に訪問したシーカーアジア財団さんでした。お世話になった吉田さんとも再会できてとてもよかったです。
今回見学でお伺いした話をまとめたいと思います。
HPはこちら→シーカーアジア財団
中心部から2キロの都市スラム
クロントイ・スラムは僕達JICAボランティアのハウスやJICAのオフィスの最寄り駅、アソーク駅から約2キロほどのところにあります。中心街から本当にすぐ近く。
このような写真が撮れる、31階以上ある建物が立ち並ぶ大都会から2キロということです。
クロントイのメインストリート
クロントイ・スラムの歴史
クロントイ地区はチャオプラヤ川に面した河川港地区で、かつては湿地帯が広がっていました。
このように何もない土地だった
1940年代以降の工業化と共に、湾港では労働力が必要となりました。その一方で地方では飢饉や干ばつが起こったため、農業従事者たちは都市部に出稼ぎにやってきます。
国が持つ公の土地だったクロントイ地区を、彼らが住む場所として不法占拠していったのがクロントイ・スラムの始まりでした。ほとんど何もなかった土地に廃材やトタンでできた住居が広がっていきました。
昔湿地だったこともあり、ワニが神様。昔はワニもいたらしい?
1985年に政府がランド・シェアリングという取り組みをはじめました。雑多に人々が暮らしている土地を、港の土地と人々が暮らすスラムの土地とに分けていったのです。
結果として行政に登録された27地区の人口密集コミュニティが出来上がりました。
総面積は636,000㎡。バンコク都庁の発表によると人口は55,956人。ただしそれは政府が把握している人口の数で、実際には約10万人の人々が暮らしているとのこと。
地方からの出稼ぎで3か月程度滞在しては出ていくという人も多いので、人口の流出入が多く、実際の人数を把握するのは難しいようです。
スラム内のごみ置き場
所狭しとバラック小屋が立ち並んでいるので、奥までゴミ収集車は入って来られない
強制撤去や麻薬の問題
住民たちは強制撤去の脅威と隣り合わせの暮らしを送っています。
クロントイ・スラムは先ほども書いたように中心街がらほど近い一等地です。そういうこともあり、インラック政権の際に20年以上かかるクロントイ再開発計画が立てられました。
写真中央のしましまの建物が港湾局
湾港局側と住民代表が話し合いを進めるも、その時々の政治情勢によって政権が変わったり話し合いに時間が取れなくなったり、そうこうしているうちに湾港局の担当が変わったりと、なかなか話し合いは進まないとのこと。ただ、あと5年で強制撤去の話も出ているそうです。
シーカーアジア財団さんの取り組み
クロントイ地区はそうした居住権の問題、環境衛生、就業就学、麻薬など多くの問題を抱えています。
そんな中でシーカーアジア財団さんは子どもたちが安心して過ごせるスペースを目指してコミュニティ図書館事業を行っています。
図書館は、子どもたちの知識や知恵、感性が育まれるスペース(空間)であると信じています。
本や各種メディアに触れる機会の少ない子どもたちが利用できること、スタッフが紹介等を通して読書を促すこと、図書館がコミュニティ・センターとしての役割を担うこと、このような趣旨で図書館事業を立ち上げました。
図書館が知識を得られる場所であると同時に、活動やリクリエーション等を実施して、利用者が楽しめる場所になることを目指しています。
例えば、子どもたちへの絵本の読み聞かせ活動、音楽活動、そしてタイの伝統文化保全と継承を目指した芸術活動を実施しています。
館内には、おもちゃで遊ぶスペースや大人のための読書スペースも設けています。また、麻薬の蔓延等、地域社会が抱える問題から青少年を遠ざけるという役割が図書館にはあります。
―シーカーアジア財団HP コミュニティ図書館事業 より引用
2年くらい前に改装されたようで、僕がきたときとは内装が変わっていました!内装の設計は大学生対象でコンペを行って決めたそうです。
現在の内装
きれいになってました
3年半前。
この子たちも随分大きくなっているよーとのことでした
クロントイ地区以外では、山岳部の学生のための学生寮事業や貧困者向けの奨学生制度を行っています。
このクロントイ地区出身のオラタイさんは、元奨学生の外交官です。ロシア語を専攻してプラユット首相とプーチン大統領の通訳も務めた彼女は「この図書館が自分の夢の基盤を作ってくれた」と話しています。
「困難な状況が自分の精神を強くしてくれる」
そう話す彼女はクロントイ地区の希望の星ですね。
これからの取り組み
昨年末に吉田さんが行ったReady forが目標達成したらしく、クロントイ・スラム初のブランドが立ち上がる予定だそうです。
タイ最大のスラム発のブランドを立ち上げ現地の女性を応援したい
クロントイの外に住むバンコクの人クロントイ地区に対して差別意識があるため、タクシーに頼んでも行ってくれなかったり、クロントイから外の学校に通うと「スラム出身だ」ということでいじめられたりします。それくらいイメージは悪いところなんですね。
その「クロントイ=麻薬」のようなマイナスイメージを払拭して、「クロントイってブランドができたところだよね」というプラスのイメージにもっていきたい、というのがこの取り組みの狙いです。
現在起きている主な問題は①家庭の収入が不安定である事②子どもたちの教育支援が未完成なこと③スラム=悪いイメージと国の中で持たれてしまっていることです。私達は、この問題を解決するためにスラム発のブランドを立ち上げます。なぜブランドかというと、スラムの抱える問題を若い方々にも、もっと身近に伝えたいからです。
感想
クロントイ・スラムの訪問は2回目でしたが、今回は前回僕が理解できていなかった部分の話まで聞くことができてとてもよかったです。
タイ最大規模のスラムが、高層ビルが立ち並ぶ街の目と鼻の先にあること。
バンコクって都会だなー、鹿児島より圧倒的に都会だなー、中進国っていうより先進国っぽい感じしかしないよなー、なんて思っていたけどここはやっぱり3年半前と変わりがなくて、「中進国」たる所以を感じました。
吉田さんに再会できたのも本当に嬉しかったですね。変な感じがしました。
バンコク滞在中にまた子どもたちとも遊びたいなーと思います。
おわり。