どもです。1ヶ月のバンコク研修が終わり、配属先のNGOがあるチェンライにやってきました。
チェンマイの上のチェンライ
チェンマイじゃないの?ってよく聞かれますが、チェンライです。チェンナイでもないです。まずチェンナイはインドです。これがこんがらがってたのはほかでもない僕なんですけどね。
北の端っこ。ラオスとミャンマーの国境であるゴールデントライアングルがあります。
とりあえず2月9日、バンコクを立った日のことからまとめていきます。
ドナドナの日
ついにやってきた、このドナドナの日。皆がタイの地方にバラバラと散らばっていく様子から隊員たちはドナドナの日と呼んでいるようです。
午前中のTICA(タイ版JICAのような感じ。ただし独立行政法人ではなく外務省の一部)のセレモニーが終わると、お迎えに来た配属先の人に連れられてみんなあれよあれよと散り散りになりました。本当にあっという間だった。11人もいますからね。
ドナドナの真っ暗な歌詞とは裏腹に僕は不安よりもワクワクが圧倒的に大きかったです。カウンターパートとは別の人が迎えに来てくれました。
チェンライには同期隊員がもう一人いるので二人とも同じ飛行機で移動。遠い分飛行機利用なので、下手にバンコクに近い人たちよりも先に到着です。空港について同期隊員ともお別れし、配属先へ移動しました。
配属先についてメールでやり取りをしていた方と会いました。Jさんとしましょう。Jさんは言います。
「二階でざっくばらんに話しましょう」
避けては通れない壁
Jさんにそう言われて、二階の部屋で二人きり。僕の母と同じ年、日本人の旦那さんを持つJさんがこの財団のトップです。もうまたすぐに日本に戻るのですが、僕が来るので待っていてくれたのでした。
「まずはあなたのジェンダーのことなんだけど…」
はい、来ました、避けては通れない壁が来ました。覚悟はしてました。
タイはジェンダーについて寛容な国です。街を歩けば男なのか女なのかよく分からない人が日本より多くいて、トムボーイが可愛い女の子を連れて歩き、カトゥーイがショーをしています。
しかし、トムボーイ(この国では僕もここに入ります)は強姦に遭いやすい。Jさんはそのことを何より心配していたようです。
「なぜ私がJICAに対してあなたに女子トイレを使えと言うように言ったり、女性専用の部屋を用意したりしたかわかる?」
「はい、トムボーイは事故に巻き込まれやすいからです」
「どんな?」
「えっと、強姦、とか」
「その通り。でもね、実際に今日あなたに会ってみて驚いたの。履歴書で見た時には女性にしか見えなかったから私はそういう助言をしたわけだけど、今のあなたは...女性には見えない。男性に見えるから。」
そう、彼女の手元にある僕の履歴書は恐らくマラウイに行くにあたって提出した履歴書です。僕は女性隊員として生活することを想定し、怪しまれないように髪を今より長めにしていたのです。あの写真は確かに...男には見えないはず。
「特に声。その声はどうしたの?手術をしたの?」
「いえ、注射です。ホルモン注射をしていました。もうやめて大分経ちますが」
「どれくらいしていたの?」
「大体6ヶ月です。2年ほど前にやめました。」
「どんなホルモンを打っていたの?」
「エナルモンデポーです」
こんな感じでまだまだ事細かに尋問(笑)は続きました。こう書くとJさんが怖い人みたいですが、全くそんなことはなく、流ちょうな英語を操りながら笑顔でバンバンと質問をしてきたのでした。
「さて、今私が心配しているのは家のこと。あなたの姿を見たらきっと大家さんは驚くし、隣近所の人はも驚くはず。どうしてここに男がいるの?ってね。」
「確かに、そうだと思います。言われたように女子トイレを使っていますが、驚かれることの方が多いので」
「それはそうでしょう!今は男にしか見えない。背は低いみたいだけど。そりゃびっくりするわ。だからね、自分のことばかりじゃなくて人のことを考えましょう。」
いやぁ、もうすみませんしか出てきません。悪気がないのは百も承知ですが、ここにきてガンガンに自尊心ポイントが削られていきます。
「もちろんです」
「日本人はそういうのを大事にするでしょう?周りの人の気持ちも考えて。そしてトムボーイやジェンダーの問題はタイの大きな問題であって、ひどい話だと思う。でも、私たちが解決しないといけないのはその問題じゃない。そこに時間をとられている場合じゃないの。解決しないといけないのは病気の問題なの。とりあえずネクタイとって」
「はい笑」
で、もうここまで言われてしまうと僕もジェンダー問題についてはどうでもよくなってきました。確かに、自分の性別に振り回されている場合ではないですよね。少なくとも向こう2年間は。
とりあえず、男性一人称のポムや丁寧語のクラップを財団関係者の前や同じアパートの人の前で使わないこと。もう癖になっているので難しいですが、かくあるべき場所ではそのようにしていくしかないかなーと。郷に入れば郷に従えですからね。結局お店とかでは普通に使ってるけど。
そして大家さんは僕を見るなりマジでびっくりしていたので、Jさんがあわてて僕のパスポートを見せました。なんかこの、うまくやり過ごさなきゃいけない感、久しぶりです。
何はともあれJさんも含めて財団のスタッフはとても親切です。僕が快適に過ごせるように尽くしてくれます。
きれいな部屋のふかふかのベッドでぐっすり眠りました。
長くなったので今日はここまで。次回はいよいよ仕事始めです!