どもです。3月24日は世界結核デーです。この日は近代細菌学の開祖、ロベルトコッホさんが結核菌を発見した日。今年は135周年だそうです。
今回はストップ結核パートナーシップのHPのに記載された「結核にまつわる8つのウソ」に沿ってちょいちょい補足をしながら結核の基礎知識を解説していきたいと思います。まずは前半の4つのウソから見ていきましょう。
Stop TB partnership What is World TB Day?
ウソ①結核は既に制圧された病気だ
→真実①今なお毎年約1000万人以上が結核を発症している。世界の主要な死に至る感染症の一つ。
結核=「昔の病気」というイメージが強いかと思います。僕も正岡子規とか風立ちぬとかの昔のイメージが強かったですね。
確かに1940年代に治療薬ができるまでは死の病で、日本の死因第1位にもなっており「亡国病」と呼ばれる程でした。
しかし、薬ができた今でも世界の10大死因の1つでもあります。昔の病気ではないんですね。
2014年では960万人が発病し、150万人が死亡しています。感染症としては、HIV/エイズに次ぐ死因の2番目です。
ウソ②自分の国には結核なんてない
→真実②結核はどの国にも存在する空気感染性の病気。みんな発病する可能性はある。
結核患者人口の60%はインドに続き、インドネシア、中国、ナイジェリア、パキスタン、南アフリカの6か国が占めています。
しかしどの国にも結核は存在しますし、人の往来を止めることなどできない現在、空気伝播する結核は世界的に根絶しなければ結局どの国であっても感染の可能性はあります。
ちなみに日本は結核中蔓延国で、先進国の中では圧倒的に高い罹患率です。
(人口10万人当り10以下で低蔓延国、100以上が高蔓延国とされている。)
その理由の一つは超高齢化社会であること。
戦前や戦後に結核に感染した人がすぐには発症せず、高齢になってから免疫力が低下して結核を発症するというケースが増えているため、今後も高齢者を中心に結核患者が増加すると考えられています。
また他の理由として、先進国の中でも日本は湿度が高く、結核が蔓延しやすい気候条件であることが挙げられます。
ウソ③上記のように深刻な死因である結核。これを終わらせるための政治的な意志も資力も十分にある。
→真実③結核を終わらせるために入手できる資力は必要な量の半分にも満たっていない。
慢性呼吸器感染症である結核は、その対策を長期にわたって忍耐強く継続していく必要があります。しかし徐々に結核患者数が順調に減ると、今度は結核対策への予算配分が減り、人員が削減されてしまうという懸念もあります。結核政策は為政者の関心の有無に左右されがちなんですね。
こうした人々の関心の低下や、多剤耐性結核などの新しいタイプ結核のため根絶が難しくなっています。
ちなみに、人類が唯一根絶させた感染症は天然痘。これについてはまた別記事を書こうと思います。
多剤耐性結核
結核菌は抗菌薬に対して耐性を作ることができます。
少なくともイソニアジドとリファンピシンというこの2種類の結核薬が効かない結核を「多剤耐性結核(MDR-TB)」と呼びます。
通常の結核は適切な治療で完治できますが、薬の量が不適切だったり、治療を不完全なままやめてしまったりすると結核菌が薬への耐性を持ってしまいます。
多剤耐性結核の薬は高価なうえ入手しにくく、患者さんがうける副作用も大きくなるので更なる困難を招いてしまうんですね。
さらなる薬剤耐性を持つ結核を「超多剤耐性結核(XDR-TB)」と呼びます。
2015年時点で48万人がMDR-TB、さらに10万人がXDR-TBで、計58万件の内45%をインド・中国・ロシアが占めています。
ウソ④自分はワクチンを打ってるから大丈夫!結核にはならない!
→真実④今あるワクチンは大人の結核を防ぐことはできない。
みなさんの二の腕の辺りには、正方形にきちんと並んだあの点々は残っているでしょうか。これがBCGワクチン、いわゆるハンコ注射です。
BCGは特に子供の結核予防に有効で、安全な予防接種として世界で広く用いられています。
新生児へのBCGワクチンは乳幼児結核、粟粒〈ぞくりゅう〉結核(菌が血液の中に入って全身にばらまかれる状態)、結核性髄膜炎(血行により脳を包む膜=髄膜に結核菌がたどり着き病巣を作る)など、血行性に広まる結核病変については阻止する効果があることは認められています。
※多くは肺結核ですが、結核自体は体中全身、肺以外にもできます。(肺外結核)
ただし、経気道感染した成人の肺結核に対する予防効果は高くないとされています。
補足:任国の結核状況を確認してみよう!
WHOページから各国の結核の状況について確認することができます。
こんな感じ。結核以外の病気のデータもWHOのHPで入手できます。
また、2012年のデータですが人口10万人当たりの患者数のランキングもあります。こちらは日本語。
世界・10万人あたりの結核患者数ランキング(世界ランキング - 国際統計格付センター)
もしこれを読んでいるあなたが協力隊の隊員であれば、ぜひ任国のランキングを確認してみましょう。
前半はここまで、次回は後半です!
結核にワクチンがないのなら打つ手はないのか?結核患者は隔離されるべきなのか?といったお話です。
参考サイト
World Health Organization What is TB? How is it treated?
World Health Organization Drug-resistant TB: XDR-TB FAQ
Stop TB partnership What is World TB Day?
(上記のサイトを参考にしていますが、英語の翻訳ミスによる解釈間違いがあるかもしれません。その場合にはコメント、メールにてお知らせください)