どもです。前回の前編に引き続き、結核にまつわる8つのウソから結核の解説をしていきます。
前回述べたように、ワクチンがないのなら打つ手はないのか?結核患者は隔離されるべきなのか?といった内容です。
ウソ⑤結核を防ぐことはできない
→真実⑤結核に「感染」しても、「発症」を防ぐことはできる
標準的な免疫力があれば結核菌が体に入っても追い出されます。
身体にとどまったとしてもほとんどの場合、免疫によって封じ込められたままであり、一生発病しません。健康な人であれば感染リスクは10%程度です。
こうして菌が体内に潜伏し、封じ込められたまま活動していない状態のことを「感染」といいます。この状態では人にうつすこともありません。
世界人口の3分の1はこの「感染」の状態にあるとも言われています。結核菌が体の中で眠っている状態ということですね。
逆に免疫が低下して結核を封じ込められなかった場合、発症してしまいます。飲酒・喫煙をする人、エイズ、栄養失調症、糖尿病、癌など免疫不全の人はリスクが高まる、ということになります。
ちなみに結核菌は紫外線に弱く、体外に排出された菌は日光に当たると数時間で死滅します。
ウソ⑥結核は完治できない
→結核は治せる。治療費は安くて30ドル(3000円)程度
結核は通常、6か月以上の薬の服用で完治させることができます。
この30ドルというのはストップ結核のHPからそのまま引っ張ってきた数値なので何とも言えませんが、日本の場合、結核の治療費用については、感染症法による公費負担制度(国・自治体からの治療費補助)があります。95%の補助が出る場合が多いようです。5%負担ということですね。
ウソ⑦結核になった人は長期間隔離されるべきだ
→真実⑦治療をはじめて少し経てばほとんどの人は結核を蔓延させなくなる。
上で述べた「感染」の状態、つまり結核菌が体内にあっても、人への感染性はありません。
「発症」の初期は、咳や痰の中に結核菌が出ませんが、結核の進行に伴い、咳や痰の中に結核菌が排菌され、排菌量が増えると他の人にも感染させるようになります。
しかし、排菌がある場合も、一般的に薬を飲み始めて約2週間で他の人への感染性はほぼなくなります。
こうした理由から僕がいるNGOでの患者訪問でも基本的にマスクはつけていません。病院ではつけていますが。
風立ちぬで菜穂子さんがサナトリウム(長期療養施設)で治療を受けているシーンがありますが、あのイメージって強いですよね。
当時はまだ結核に有効な治療法がなく、きれいな空気を吸うことが一番の治療法だとされていました。寒い中凍えながら毛布にくるまって外にいるのはそのためなんですね。
こういうサナトリウムを舞台にした文学作品をサナトリウム文学というのですが(まんまですね)、結核と文学の関係は興味深い題材なのでまた別記事で書こうと思います。
ウソ⑧結核になってしまった人は必要な診断や治療を受けることができている。
→真実⑧毎年新たに結核に罹患する人の内400万人以上が良質な治療を受けられていない。
結核は長期間薬を毎日飲み続ける必要があることから、適切なフォローや観察が受けられる状態がふさわしいと言えます。
前編で述べた多剤耐性結核の発症を防ぐため、つまり結核菌に「耐性」を作らせないためには、薬をきちんと服用する(のんだり、のまなかったりは最悪)、十分強い薬を複数組み合わせて治療することが適切な治療といえます。
いかがでしょうか?エイズ・結核・マラリアの世界三大感染症の一つでもある結核の病名を知らない人はなかなかいないと思います。
ただ、どんな病気なのかは理解していない人が多いかもしれません。僕も協力隊での配属が今のところになるまで、受験前にさらーっと勉強した程度のことしか知りませんでした。
少なくとも「結核は昔の病気ではない」ということを分かっていただけたのであれば幸いです。
参考サイト
World Health Organization What is TB? How is it treated?
World Health Organization Drug-resistant TB: XDR-TB FAQ
Stop TB partnership What is World TB Day?
(上記のサイトを参考にしていますが、英語の翻訳ミスによる解釈間違いがあるかもしれません。その場合にはコメント、メールにてお知らせください)