自称「村のガードマン」に会ってきた―アル中結核患者さんの話

どもです。昨日今日はJICAの専門家の方や開発コンサルタントの方が来られていたので、病院見学に同行させていただきました。

自称「村のガードマン」の患者さん

普段僕はクリニックにはいきますが、患者さんが入院しているような場所に入ることはありません。クリニックの外で外来の患者さんのスクリーニングを観察しているので。そんなわけでベッドが所狭しと病院のエレベーター前のフロアに並んでいるのは初めて見ました。

地方の群病院にも行きましたが、こちらは群レベルでこんなにしっかりしているのか―という印象。きれいでした。

今回何より印象に残ったのはホームビジットをした患者さん。めちゃくちゃ面白い人でした。タイ語ペラペラのJICAの専門家が補足の説明をしてくださって、より一層会話がよく分かりました。

僕がこれまでの訪問で出会ったのはなんというか、普通の患者さんでした。会話は成立するし、家も掘っ立て小屋みたいにボロボロだけど汚いわけではないし。

今回の患者さんは、もうむちゃくちゃ。58歳の男性です。まず会話が成り立っていません。僕のタイ語の理解力がないのかと思ったらアルコール中毒でちょっと頭がおかしくなっちゃってるとのこと。家もめちゃくちゃ汚い。ゴミだらけだし、不衛生な水が溜まって蚊が湧いていました。カウンターパートもきれいにしなさいよとお説教。

そこら中ゴミだらけ。

でもそんな生活なのに悲壮感はない。

「結核の薬はいつから飲んでるんですか?」

『もう一年以上かな!忘れもしない、あれは2月のこと...』

いやいやいや、んなわけなかろう(ケースにもよるが、通常の治療は6ヶ月)。実際この人が薬飲み始めたのは11月からだとカウンターパートは言っていました。忘れとるやないか。

そしてドヤ顔でボウルに入った小エビを見せてくれました。今朝もこれを売って80バーツを稼いだそうです。今まで訪問した患者さんやクリニックに来た患者さんを考えると、収入を得ながら治療をしている患者さんは珍しいように思います。

『この仕掛けを見ろ!入ることはできても出られないんだ!ドヤ』

『浮かないように石が入ってる!ドヤァ』

この仕掛け。そしてさも自分が開発したかのような笑顔です。かわいい。

『この服を見ての通り、俺はここら辺のガードマンなんだ!変な奴が来たら村の人を守らないといけない!』

この人の服装ですが、穴だらけの青いTシャツです。なんだよ見ての通りって。

「この5頭の犬は飼ってるんですか?」

『こいつらも守らないとな!』

飼ってるわけではなさそうですが、けたたましく吠えまくっていました。更に患者さんのおじさんはいきなり

『結核(ワンナローク)で良かったよ!一日一病(ワン ラ ローク)だったら大変なことだった!』

と、タイ語オヤジギャグを放ってきました。思わず僕とカウンターパートと専門家の方は爆笑。

カウンターパートもカウンターパートで、この患者さんの隣の家にいた若い女性がちょっと様子がおかしかったのですが、ド直球に

「あなた自閉症なの?」

って。おい!笑

「自閉症じゃないけどー、ちょっと頭おかしいのー」

と答える女性。なんだこの会話は。タイ人は冗談が黒いって聞いていましたが、こういうところが既に日本とずれてるんだと思います。

自称村のガードマンは最後にピシッと敬礼で見送ってくれました。彼は明日クリニックに来ることになってるので、また明日会いましょうねーと言ってさようならしました。

専門家の方が「どうやって行くの?自転車?」と聞いたところ

『この自転車で行く。残念だが乗せてあげることはできない!(荷物かごがついていて2ケツできない仕様)』

最後まで面白い患者さんでした。

 

JICAの専門家の方曰く、このガードマン妄想ってアル中の人には良くあるらしいのです。でも被害妄想とかおかしくなってしまうとかよりはだいぶ幸せな症状のような気はしました。ただこの不衛生さはいただけないですね。3,4時間かけて大掃除したいくらいでした。

明日会うのが楽しみです。こうやって1人1人の患者さんの性格や生活のことももっと知っていけたらいいなぁと思いました。

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