どもです。協力隊としての任期が半分以上過ぎて、僕の周りでもこの制度に対する疑問を持つ隊員が散見されるようになりました。
この話はいずれ書こうと思っていたので、これを機会に書いてみることにしました。あくまで一個人の体験記だと思って流し読みしてください。
協力隊なんか行ってたまるか!と思っていた
僕は大学では国際関係学科で学び、ゼミでは国際協力論を専攻していました。
大学1年生の頃に山本敏治さんの本を読んだこともあり、協力隊は国際協力への登竜門とも言え、将来的に国際協力の業界で働きたいのであれば、語学学習機会・経験・待遇ともにこんなに良い制度は他にないということも分かっていました。
ゼミで協力隊についても学ぶこともありました。協力隊事業をODAを使って行う事業の中の一つという大きな枠で考えていたが故に、当時の僕の協力隊へのイメージはかなりネガティブなものでした。
「2年間の任期中は大した量のレポートもなく、比較的安全な場所での生活も保障されていて、何もせずにふらふら遊んで帰っても許される、国際協力とは名ばかりの日本の国民のための制度」
こんな感じでした。
そもそも協力隊の活動目的が
⑴開発途上国の経済・社会の発展、復興への寄与
⑵友好親善・相互理解の深化
⑶国際的視野の涵養とボランティア経験の社会還元
の3つであり、⑴に関してはあまり期待されていないわけです。
実際に参加してみての所感を正直に言えば、上記のイメージは今もほぼ変わっていない、というかあながち間違っていません。協力隊員に具体的な成果が求められていないのは事実だからです。
変わったイメージといえば
「看護師や教師、技術者ならまだしも、その国のお金持ちのために活動するスポーツ職種等は意味があるんだろうか」
と思っていたのが
「どの職種も「意味」で言えば同じくらい、むしろスポーツ職種の方が意味があるかも」
になったこと。これに関してはかなり考え方が変わりました。
それでも行こうと思った理由
大学卒業が近づき、大学院に落ちてたら次はどうしよう?と考えていた頃、友達から連絡が来ました
「バイト先の店長の知り合いで元協力隊の人がいて、店長に、国際関係学科だから興味あるでしょってその人とごはん行くように言われたんやけど、私はそんなに興味ないんよね。そういうの興味あるやろ?一緒行ってくれない?」
こんな感じの内容。僕は話を聞いてみたい!と思っていたので二つ返事でOKしました。
色々話を聞いて面白そうだなとは思いました。
「行ったらええやん」
と友達は言いました。
「まぁ楽しそうだしいい経験にもなりそうだよね。国際協力を仕事にしたいなら、めちゃめちゃおいしい制度ではあると思うし。でもさ、あれってお金を貰いながら遊んで暮らして2年間終えることだってできるんだよ。そんな制度に参加していいのかなぁ?」
と答える僕に友達はこう言いました。
「そうやとしても、こーちゃんは遊ばんやろ?」
僕はそれを聞いてハッとしました。確かに、他の隊員が仮に遊んで活動をしなかったとしても、自分はちゃんと活動をすればいいじゃないか…。
「あなたが助ることができる人の数は、あなたの努力と比例するよ」
昔言われた言葉を思い出しました。
そうか、僕が協力隊のその先に行くために協力隊になるなら良いんじゃないか?それからは協力隊に参加することも視野に入れて動き始めました。そして大学院には落ちていたので(今思えば落ちてて本当に良かったよ)卒業後の春募集を受けて、紆余曲折を経て、晴れて派遣されることになりました。
隊員生活が半分以上過ぎて
青年海外協力隊としての任期が半分以上過ぎて、隊員同士でこの制度の意義や賛否について話すことも増えました。
ウィキペディアの協力隊のページにも、こんな記載があります。
2009年に、JOCAがアフリカ8か国の協力隊事業を対象に行った調査研究では、以下のような問題点が指摘されている。
現地のニーズにあった人材確保の難しさ
派遣要請と活動実態とのギャップ
ボランティアの語学力の不足なかでも、派遣国からの要請と活動の乖離は、繰り返し問題点として指摘されている。想定していたものと違う活動を依頼されることは少なくなく、酷いケースでは「仕事がない」「カウンターパートがいない」「そもそも配属先がない」といった深刻な事態も報告されている。
これらの原因としては、要請から派遣までに1年以上ものタイムラグがあることに加え、JICA現地事務所側が、安易にボランティアの自主性を強調していることも指摘されている。また政治的な理由から、実際には必要のない要請が挙げられるケースも指摘されている。
また、技術をもったボランティアが「単なるマンパワー」とみられたり、逆にボランティアがモノを援助をしてもらうためのパイプ役として扱われるなど、協力隊の活動内容が、現地に理解されていないケースも散見される。
協力隊事業に関する評価としては、人材育成の観点からは高い評価が寄せられる一方、現地社会への貢献については、多くの隊員からも「役に立っている実感がない」との声が寄せられている。
「現地に貢献できている制度なのか?」という点で思い悩むは想定内だったので、今更あまり考えてはいません。あくまで自分のため、自分が次に進むための手段ととらえていたためです。このことは実際に面接のときにも話しました。
僕が今やっている活動も、意味があるのかな?と思うことがあります。配属先での仕事は殆どマンパワー的な部分もあります。
前回も書きましたが、僕が配属先の外でやっていることは少なくとも僕がいる任期中に芽が出るような活動ではありません。
先生達はすごく喜んでくれたけど、「結局のところそれって本質をついているのかな?」と不安になります。
目的ではなく手段としての協力隊
すでに多くの人が言っていることですが、協力隊を手段ではなく目的としている人は参加するとつらいと思います。もし協力隊に行くこと自体が目的になっている方がいたら、こちらのタケダさんの記事を読むことをお勧めします。
あとは以前も紹介した山本敏治先生の記事も。
あとはウィキペディアの青年海外協力隊堕落論のページも長いけど読む価値あり。というか行きたい人にも現役隊員にも読んでほしいです。
手段として活動を考えてる僕もつらい・きついことはあるのですが、割り切って考えやすいですし、制度そのものに失望することはありません。もう一通り考えつくして堂々巡りをした後だからです。生意気な大学生の頃、参加してもいないのに抱いていた協力隊制度へのモヤモヤが今になって役に立っています。
そして今後の目標に対する気持ちも、協力隊に参加しなければここまで強くならなかったと思います。
参加してよかったか?
僕がこれからやろうとしていることは、派手ではないし、キラキラもしてないし、傍から見てカッコいいな、応援したいな、とワクワクできるようなことではないかもしれません。
それでも他でもない僕自身は、これから自分がやろうとしていることにものすごくワクワクしているし、それが輝いて見えているし、楽しそうだし、全力を尽くしたいと思っています。
こういう風に思えたのは協力隊に参加することで、①自分に足りない部分や得手不得手を把握し、②「理想と現実のギャップ」と口で言うのは簡単なことの真の問題点が実際にはどこにあるのかを目の当たりにし、③その解決のために今から自分は何をすべきかという人生の作戦会議をする時間をたっぷり取れたからです。
そういった意味で、協力隊に参加して良かったとは思っています。新卒での参加も賛否両論あるけど、僕は若いうちに来てよかったなって思いました。尊敬する大人、カッコいい大人に沢山出会えたことも大きいです。
もちろん活動に不満足なままで終わるつもりはありません。ブログには弱気なことばっかり書いているけど。笑
このままずるずる終わっていってたまるか、と毎日思っています。臥薪嘗胆。キモをぺロペロする日々。
きっと他の隊員もそうです。悩んでもがき苦しみながら、少しでもその国のため貢献しようとしている。
少なくとも僕が知っている隊員の大半はそういう真面目な隊員で、ネットで批判されているような不良隊員ばかりというわけじゃありません。これも参加したから分かることだよね。
長々ここまで書いておいてなんですが、結局のところ協力隊一人一人の置かれている環境には差がありすぎるので、十把ひとからげに協力隊を良いか悪いか言うことなんて、簡単にはできないんですよね。だからこれらの見解も、本当に一個人の見解でしかないことはご理解いただきたいところです。
最近あとどれくらいタイにいるのって聞かれるたびに1年くらいかな!とか、10ヶ月くらいかな!って答えてたんですが、普通に嘘ついてました。あと9か月くらいですよね。
最後に「自分のためにはもちろんなったけど、少しは貢献できたよ!」と言えるようにあと残り9ヶ月もできることを精一杯やっていきたいですね。
おわり。