コムローイ・ロイクラトンの功罪―観光産業としての功、環境問題としての罪

どもです。先日チェンマイでイーペン祭りに参加してきました。無数の熱気球が空に上がり、たくさんの灯籠が川に流されるのはとてもきれいな光景です。

が!

タイに住む誰もが一度は考えたことがあると思います。

「あの灯籠たちは最終的にどこへ行くのか?」「環境への影響は?」

僕もそう思っていろいろ調べてみました。

灯籠はどこへ行く?

ロイクラトンのロイは浮く、浮かべる、クラトンはバナナの葉などで作った器を意味します。

当然といえば当然ですが、空に放った灯籠たちは最終的には落ちてきます

川に流した灯籠たちは、最終的にタイランド湾まで流れて詰まっているようです。

川を流れる灯籠を見ながら、グラブの運転手さんに「これ最終的にどこにいくの?」と聞いたところ、「役所が回収してる」という回答でした。ま、そうなるよねぇ。

先週日曜日(11月17日)はタイ・ロイカトウーン(ลอยกระทง)でチャオプラヤ川などに「灯篭」が大量に流されたが、バンコク府が約80万個片付けたと発表した。

流される「灯篭」はバナナの葉やバナナの太い幹を使って作られるもので、陰暦12月の満月の日を中心に全国で行われる伝統行事。
犯した罪を謝罪し、自らを清める祭りである。

80万個以上の「灯篭」片付ける より引用

犯した罪を謝罪する祭りだったのか…。今知りました。

 

クラトンと環境配慮

クラトンの多くはバナナの葉でできています。たまに発泡スチロール製のものもあるようですが、やはりバナナの葉のように生物分解性のある素材を使用することが推奨されてはいるようです。

画像はhttps://4travel.jp/travelogue/11268100より引用

 

中には魚が食べられるようにパンでできているものもあるみたい。

画像はhttps://www.thaich.net/bangkoktsushin/20161106ec.htmより引用

 

しかしバナナの葉を使っていても、それらを器にする時にステープラー(ホッチキス)や釘を使っていることが多く、やはりそれは環境には悪影響です。

また、いくら生物分解性のある素材やパンを使っていたとしても、一度に大量に流されればそれらが不完全分解される、つまり腐敗する際に水質が悪化してしまいます。

参考:Loy Krathong in Thailand: Cultural tradition or environmental problem?

 

コムローイによる火災

そして空に放つランタンが落ちてきて、家が燃えてしまうこともあるようです。

僕も飛ばす時にランタンに引火して燃え上がり、前髪とモミアゲが焦げました。そりゃ火ですものね。

コムローイ(熱気球)は、火をつけて空へ舞い上がります。私が祭を散策していても、舞い上げたコムローイが木に引っかかったり、急落下して他のコムローイに引火する場面を見かけました。

チェンマイ・イーペン祭りの「害」について考えてみた より引用

上記の記事ではタイ人の大学生がSNSに「このコムローイで家が燃えてしまう人がいることも忘れないでほしい」という旨の書き込みをしていたという話も出てきました。

 

経済効果は間違いなく大きいはず

そんな問題があるとは言え、もともとは伝統的なイベントを、入場料を徴収するインターナショナルフェスティバルと位置づけたことで大きな経済効果をもたらしているはずです。

2017年4月の記事に以下のような記載がある通り、観光産業はタイの経済成長を支えているのです。

観光産業の市場規模は昨年の2兆9000億バーツ(約9兆3380億円)から10年後に約2倍の19兆円規模へと拡大、国内総生産(GDP)比では約2割から約3割に伸びると見込まれる。現地紙ネーションなどが報じた。

タイ、観光産業19兆円規模に拡大 10年後にGDPの3割 より引用

 

今回参加したメーリム会場のイーペン祭りはチケット代が一人3999バーツ、手数料などもあったので実質4000バーツ以上、つまり日本円にして13,800円以上はかかったわけです。

一人14,000円だとして今回の会場規模は2日間で8000人規模。単純にただチケット代だけでも1億1200万円が動いている計算になります。そして規模はそれより小さかもしれませんが、似たような会場が他にも数箇所あるのです。そして彼らの宿泊費、食費、交通費などなどを考えると、チェンマイのイーペン祭りだけでとんでもない規模になります。

ちなみにタイ人用のサイトで購入したため、価格はタイ人と同じなはず。ただし実際会場にいたのはほとんど日本人のツアー客でした。

式はタイ語、英語、中国語、日本語の4ヶ国語で進行されましたが、明らかに日本人が多かったですね。

 

こうした理由から、「伝統か?環境か?」という課題にさらに「経済効果か?」が加わります。観光産業における経済効果という面だけで言えば、イーペン祭りは明らかに「功」なのです。

 

観光客としての責任

確かにお祭りは楽しいし、川を流れる灯籠や、天高く登るたくさんのコムローイはとても美しいです。

でも環境客としてはこの華やかなイベントの「罪」の部分も知っておくべきだと思いました。

 

このサイトではロイクラトンに参加する際の環境配慮として4つのポイントを挙げていました。内容を簡単に要約して載せておきます。

No Footprint Nomads

①クラトンは自分で自然素材で作るか、環境に優しい素材を使っているものを買う

→クラトンを自分で作るのは、地元の文化やお祭り本来の意味合いへの感謝の気持ちを示すために最も素晴らしい方法。伝統的なバナナの葉を使うもよし、魚が食べられるようにパンを使うもよし。ホッチキスなど、金属製の素材は使わずに作ってみよう。

(とはいえ上記で述べたように、バナナの葉やパンだから環境に一切問題がないということではないと言及しておきます。)

②クラトンを流す場所はよく考えて決める

→多くのタイ人がクラトンによって引き起こされる環境汚染を憂慮して、私有地や自分のプールなどに流すようにしている。宿やコンドミニアムにプールがあれば、オーナーに許可をとった上で、プライベートでイベントをやってみよう。

③放ったコムローイには責任を持つ

→周囲に木や電柱がないところでコムローイを上げよう。そうしないと、コムローイが枝や電線に引っかかって燃えてしまう。コムローイをあげるならナワラット橋の南にあるチャイモンコン寺が、静かなこともあっておすすめ。

④食事の際にゴミを出さないための道具を持参する

自分でタッパーやフォークなどを持参して、プラスチック製のゴミを出さなくて住むようにしよう。プラスチックの容器やフォークを早めに見せて不要であることを伝えないと、お店の人はすぐにごはんをすべてプラスチックの袋や容器に入れてしまうぞ!

 

ちなみに、このNo footprint nomadsはコムローイ以外の記事もおもしろかったです。日本語で言うなら「立つノマド跡を濁さず」という感じでしょうか?世界を旅するすべてのバックパッカーに見てほしいサイトですね。

 

まとめ

僕もこの記事を書いていて、特に最後の④食事の際にゴミを出さないための道具を持参するにはハッとさせられました。

基本的に家には持ち帰らずに外で食べるように心がけてはいます。やむを得ず持ち帰りでごはんを買えばゴミが出てしまいますが、自分でそういう道具を持って、コレに入れて!とお願いすればよかったんですよね。2年近く暮らして今そんな簡単なことに気がついたわけです…。

 

特にコムローイの観光客の大半は日本人でした。楽しいお祭!でも良いのですが、やはり観光客としてこういった問題があることを知っておくべきですし、そのためにできることがあればやるに越したことはないよな、と自戒も込めて記事にしてみました。

「害」を知ってしまっては、思う存分お祭りを楽しめないかもしれませんが、見知らぬ土地に来て地元の行事に参加させてもらうのだから、「現状を知る」ことは、最低限観光客自身が努力しなければならないことだと思います。

ただ楽しいだけの観光行事になってしまわぬよう、私にできることを考えていかなければならないと、つくづく考えされられました。

チェンマイ・イーペン祭りの「害」について考えてみた より引用

この記事にはとても共感しました。とてもいい記事だったので目を通してほしいと思います。

チェンマイ・イーペン祭りの「害」について考えてみた

 

来年、再来年参加してみたい方の参考になれば幸いです。

おわり。

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